2017/07/02

【映画】“家族”という呪い/葛城事件


80点

邦画が超豊作だった2016年。ウソみたいに賞レースに名前が上がらなかったけど、どう考えても傑作だった。知らないなんてもったいなさすぎる。

 無差別殺人事件を起こした男の家族の話。要するに、加害者側の話。この家族が特別狂った人間の集まりでもないし、特別貧乏だったり特別生活に困ってるわけでもないのが一番怖いかも。いるんだもんこういう人たち。葛城家だけじゃなく、出る人全員リアルだったのがすごい。

 「家族という地獄」っつうキャッチコピーがついてるんだけど、まさにそれ。家族はね、ある種の呪いだと思ってますよあたしゃ。生まれて死ぬまで逃れられない呪い。

 葛城家の父親は、とにかく自分が一番。自分の意見を曲げないし、掲げた理想になんとしてでも近付きたい。一家の主は家を持たなきゃいけないし、自分が育てた子供は大学を卒業しなきゃいけない。そんな理想があるのに、自分は父親から継いだ金物屋の店主(しかも客なんて来ない)っていう、どうにもチグハグな人間なんだよね、葛城家の父親は。

 でも態度は横柄だし暴力的だから、家族は自分の気持ちを押し殺して、父親に従って生きなきゃいけない。そんな父親にほぼ唯一抵抗してたのが、無差別殺人を犯した次男だったっつうわけ。

 さっくりネタバレをすると、長男が自殺するんですよ。で、葬儀の時に次男が「だせえ死にかた」って言うのね、兄の骨に向って。そんでそのあと、次男は無差別殺人を犯して死刑囚になる。異例の速さで死刑執行されて、兄弟そろってこの世からいなくなる。多分、弟はあの世で兄に向って、人殺ししたことを自慢してんだろうな。

 全体を通して、「食」の描き方がすばらしかった。基本的に葛城家の食卓はコンビニ弁当なんだよね。ちょっと単純すぎるけど、これだけであまりいい家庭じゃないってわかる、食のチカラよ。で、長男の結婚祝いにいい感じの中華料理屋に行く、唯一良い食事をしているシーンがあるんだけど、そこで父親が店にクレームを入れるんだよね。なにごともなければ穏やかな食事のシーンになるはずが、父親のせいでそれが邪魔される。

 あと、父親から逃れようとして母親と次男が家から飛び出し、部屋を借りて2人で住まおうとするのよ。で、長男がその部屋を見つけて、父親に教えんのね。長男は「今からお父さんが来るから逃げたほうがいい」つって2人を逃がそうとするんだけど、そこで母親はなにを思ったか「最後の晩餐ではなにを食べたい?」って聞く。母親はちらし寿司って言ったかな。そのとき、母親と次男はコンビニで買ったナポリタンを食べてた。

 そんで最後、家に一人残された父親は、カレーうどんを食べてる。次男と獄中結婚した女が次男の死刑が執行されたことを父親に報告しにくるんだけど、ずっとズルズル麺をすすってる。で、父親は女にセックスを求めるんだけど、もちろん逃げられて、もうこっから自暴自棄になっちゃう。家の中をしっちゃかめっちゃかにして、首を吊ろうとする。そして見事に失敗して、やっぱり生き残ってしまうのよ。ダサいよ本当に。この父親に自殺は出来ないでしょう絶対に。で、そのあと家に戻って、おもむろにまたカレーうどんをすするの。すごいでしょ。これだけで父親がどんな人間かわかっちゃう。

 小説はよく「食事のシーンをうまく書く人は官能シーンがうまい」って言うけど、映像でも絶対そう。赤堀監督は食と生と性が確実につながってるってことをめちゃくちゃうまく描く人だと思う。


 もし葛城事件が気に入ったら、赤堀監督の前作・その夜の侍も見てほしい。食と生と性、というキーワードを頭に入れながら見ると、ラストシーンで「うわ~~~~~」って言う。私は言った。


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